当教室では基礎、臨床の両面から統合失調症、うつ病、発達障害などの病態、機序の解明に取り組んでいます。
 医局員それぞれが興味を持つ各研究テーマを掛け持ちし、皆が意見を出し合い、オープンな雰囲気で進められていきます。


基礎研究

 
@前頭葉の錐体細胞と非錐体細胞に対する電気生理学的研究

 現在、精神疾患に対して広く使用されている向精神薬の多くは、脳内のモノアミン系の調節により、その薬理作用を発現しています。当研究では、脳内のモノアミン(セロトニン・ドパミンなど)の局所回路における興奮性調節とその作用機序を解析し、新規の向精神薬の可能性を探っています。


 
A精神疾患の動物モデルを用いた研究

 うつ病の病態解明を目的とし、うつ病動物モデルを用いて、薬理学的・行動薬理学的研究を行っています。我々は以前に、うつ病動物モデルの学習性無力ラットに対し、neuropeptide Yという物質を投与することで抗うつ様作用を認めることを報告しました。現在は、同ラットを用いて、抗うつ薬の神経可塑性に関しても研究しています。


臨床研究

  
@精神疾患の脳機能画像を用いた病態研究

 当教室では
   ・ NIRS脳計測装置(光トポグラフィー)
   ・ fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)
   ・ ERP(事象関連電位)
   ・ 探索眼球運動

などを用い、精神疾患のバイオマーカーならびに治療効果の判定への応用を模索しています。特にNIRSの所見が疾患依存性に変化するとの報告が重ねられており、精神科疾患の診断の補助として期待されています。

 
      NIRS検査中の様子


 A精神疾患の内分泌的変化に対する研究

 近年、うつ病と糖尿病、メタボリック症候群の合併率の高さが注目されており、うつ病における視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)の異常との関連が指摘されています。当研究ではうつ病患者の耐糖能、神経内分泌機能に関する指標について検討し、うつ病と糖尿病、メタボリック症候群の関連性、及び、精神症状による糖尿病、メタボリック症候群の変化について調べています。

 B臨床薬理学的研究

 今日の精神科治療において、薬物療法はその中心的役割を果たしています。当教室では向精神薬の適切な使い方や副作用に関して地域の診療所・精神科病院と研究会を定期的に開催し、日ごろの臨床における疑問をもとに皆でディスカッションを重ねています。

 また、統合失調症患者の服薬アドヒアランスに関する検討や、高齢者うつ病に対する抗うつ薬の薬効調査など行っています。高齢者うつ病の薬効調査においてはMRIやNIRSなども用い、高齢者うつ病における薬物反応性の生物学的指標の検討も行っております。

 C精神疾患に対する心理・社会的リハビリテーションの研究

 統合失調症では種々の認知機能障害を認め、これら認知機能障害と統合失調症のさまざまな側面における社会的転帰(就職・結婚など)が関連すると言われています。当科では認知機能リハビリテーションのうち、コンピューターソフトを用いて、行動・学習理論、教育心理学、神経心理学を理論的背景とする認知矯正療法(NEAR)を導入し、認知機能検査・社会機能検査などの変化とともにfMRI・ERP・NIRSなど生物学的指標の変化も検討しています。


  認知矯正療法(NEAR)中の様子


 D発達障害の診断精度向上に関わる研究

 近年発達障害が社会的な関心を集め、精神科外来を受診する方が増えています。幼少期から発達障害の診断があり、気分障害などを併存して精神科を受診される方もいれば、成人になり初めて発達障害の疑いで受診される方までいます。特に成人になって初めて受診される場合は、統合失調症など他の精神疾患との鑑別が困難な場合が少なくなく、診断精度の問題があります。
 当科では、詳細な幼少期の病歴聴取に合わせて、外来レベルで行える簡便な検査を組み合わせて、診断精度をあげる試みを行っています。また診断後のフォローとして、包括的な支援のあり方を、多施設、他職種連携を行うことで有効に行えないかの検討も行っています。

 Eアルコールリハビリテーションプログラム(ARP)

 アルコール依存症の治療としては以前から「久里浜方式」などの治療プログラムがありますが、近年では認知行動療法なども導入されます。当院のような総合病院においては他科診療科との連携や、身体合併症を有する患者において、アルコール問題を有する患者が一定数存在します。当院ではそのような患者に対して、当科独自のアルコール依存症のリハビリテーションプログラム(ARP)を作成し、その効果を検討しています。


  

研究紹介
Division of Neuropsychiatry
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